●モスクワ・天使のいない夜 I wanted to see angels かつては栄光を全身に受けて戦い、レスリングのチャンピオンにさえなったこともあったが、試合中の事故で選手生命を絶たれ、今ややくざの用心棒に身を持ちくずした青年ボブ。『イージー・ライダー』のように巨大なバイクを駆って、サラトフという地方都市からモスクワへとやってきた彼の仕事は借金の取り立てだった。初めてのモスクワではすべてのことが新鮮だった。ロシアの抱えるすべての矛盾が複雑に絡み合い、犯罪というかたちで噴出する都市のダークサイドをボブは彷徨する。めくるめく都市の速度に翻弄され、忘れそうになったりもする取立ての仕事。もうひとつ気乗りがしない理由のひとつは、彼の探す相手が旧知の友人だということだ。しかも返済に困っている。ほとんどのロシア人同様自分も相手も貧しいことに代わりはなく、ボブはほんの1日だけ待つことにしてしまう。その24時間が彼の運命を大きく変えてしまうことなど少しも知らずに。絶望と希望が隣り合わせでもたれあう、アメリカン・ニュー・シネマの雰囲気漂う作風は、セルゲイ・ボドロフ監督の未知なる才能を感じさせる。85分。
【カラー】