●自転車吐息
映画は主人公・北史郎(園子温)のモノローグから始まる。何ということもない町に何ということもない自分が小さな反抗をくり返す毎日。史郎と親友の圭太だけが、友達がとっくに出ていってしまった町でくすぶり続けている。冬の朝、史郎は圭太を誘ってその町を脱出しようとする。しかし、彼の頭の中には高校時代に撮り始め中断したままの映画「一塁」、その中で“透明ランナー”の引いた、どこまでも続く白い線のことがあった。映画を完成させ、自分も白線を追わなければいけない。しかし、彼らの新しい“一塁”は予期せぬ方向へと走り出す。そして園子温の永遠のテーマである自分探しのロードムービーがここに始まる。93分。
●桂子ですけど
映画を撮るかと思えば、東京の路上を占拠して「東京ガガガ」なる大衆パフォーマンスを煽動する園子温。問題作『部屋』に次ぐ彼の新作がいよいよ登場する。園監督が昔からのこだわりのあった“時間”というものにテーマを絞った作品だ。火葬場から盗みだした父の骨とともに1人で暮らす桂子。22才の誕生日まであと3週間。彼女はこの確実にやってくる3週間を正確に記録・記憶していこうとする。そして、赤・黄・緑といった原色で彩られた部屋の中で生活する彼女の姿を園子温は上映時間1時間1分1秒の中で再構成する。来る時間と過ぎ去って行く時間、その狭間の一瞬一瞬の中に輝きを見いだそうとする園の気の入れようは、鈴木桂子の美しさ、可愛さになって現われてくる。61分。
【カラー】