●エピデミック Epidemic
87年に製作されながら日本未公開だった幻の作品。トリアー自身が演じる映画監督は、脚本家ニルス・ヴァルセンと1年半に渡って脚本を作り上げてきた。ところが、コンピュータに入っているはずのデータがある日そっくり消えてしまっている。なぜだ! 脚本がない! どちらともなくつぶやくセリフは、「あの脚本は気に入らなかったんだ」。そしてふたりは、新たなタイトルを打ち込む。「Epidemic」。それは伝染病を意味する。世紀末への不安と期待が入り交じる姿が、ウイルスという形をとって現れる。106分。
●奇跡の海 Breakinng the Waves
ゴシック・ホラー『キングダム』の次は、エキセントリックな完全純愛映画だ。北アイルランドの寒村を舞台に、神と対話する女が真実の愛を体現しながらも、厳しい人生に裏切られていく。周囲の反対を押し切って結婚した相手が事故で全身麻痺の重傷を負う。献身的に尽くす彼女だが、いつの間にか妄想と現実をさまようようになってしまった彼の、理不尽とも思える命令に悩むことになる。そして、そのことを受け入れてしまった時、彼女の周囲からの孤立は完全となる。しかし、奇跡は起きると彼女は信じているのだった。167分。
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