ジャン・ルノワールの世界


●大いなる幻影 La Grande Illusion
 第一次大戦下。ドイツ軍の捕虜となったマレシャル中尉(J・ギャバン)とボワルデュー大尉は脱走未遂を繰り返し、収容所を渡っていく。貴族階級の独軍大尉(E・V・シュトロハイム)や捕虜仲間のユダヤ人との国籍・人種を越えた友情のなか、また新たな脱走が計られ……。最も高名なルノワールの作品で、日本でも一世を風靡した。113分。

●ラ・マルセイエーズ La Marseillaise
 1789年のフランス革命時、マルセイユ義勇軍のパリ進撃と、王制に終止符を打ったチュイルリー宮殿の奪取が、各階層の主要人物たちの日常的な真実から描き出される壮大なフレスコ画的作品。出演ルイ・ジューヴェ、リーズ・ドラマールほか。135分。

●ピクニック Partie de Campagne
 モーパッサンの小説を題材にした中編。撮影が雨にたたられ惜しくも未完に終ったが、自然の中での人間のあやしいまでにきめ細やかな官能を凝縮して描き、ルノワールのエッセンスが堪能できる傑作となった。シルヴィア・バタイユの輝くような美しさ、それを捉えたクロード・ルノワールの撮影、ジョセフ・コスマの音楽も絶品。40分。

●ゲームの規則 La Regle du Jeu
 ラ・シュネイ侯爵家の狩猟の会に集まった人々を主要登場人物として、愛に導かれた欺瞞や思い違い、嫉妬や憎悪の交錯を、洗練された悲喜劇として描いた傑作中の傑作。『大いなる幻影』をルノワールの陽の代表作とするなら、こちらは陰の代表作だが、真実を重んじ、自由を追求する天衣無縫の詩的精神は、本作でこそ存分に発揮されている。106分。


【モノクロ】