フープ・ドリームス Hoop Dreams


 マイケル・ジョーダン率いるブルズの根拠地であるシカゴ郊外のスラムで、バスケットにすべてをかける実在の二人の少年が辿る4年間を追ったドキュメンタリー。本人とその家族が貧困、麻薬、暴力、それらに伴う危険から抜け出すには奨学金を得て大学に進み、NBAの選手になるしかない。子供の頃にバスケットがうまくても、プロになってスラムを脱出しなければ、行く末は失業や麻薬中毒だ。主人公の一人であるウィリアム・ゲイツが参加したナイキ主催のキャンプでスパイク・リーが現実を語る。「君達の事なんか誰が認めてくれる? 君達がここにいる理由は、君達がいれば試合に勝つからだ。勝てば金になる。すべてに大金が絡んでいる。」とウィリアムとアーサー・ゲイジーはスカウトの目にとまり、白人居住区にある名門私立高校に奨学生として入学する。早くから才能を発揮し、学業も優秀なウィリアムは否応無しに周囲の大人たちの期待を一身に背負う。一方のアーサーには金銭問題が降りかかる。奨学金の削減と成績不振が重なり、退学を余儀なくされてしまう。早くも明暗を分けたかに見える二人だが……。
 この作品はオスカー以外の映画賞のドキュメンタリー部門を総なめにし、批評家たちが自腹を切って全米公開させ、しかも興収5百万ドルという商業的成功を収めたが、'95年のアカデミー賞でノミネートすらされなかったことで過激な論争を巻き起こした。
 シビアな現実と緊張感溢れるゲーム・シーンをさらに盛り上げた音楽プロデューサーはマルチ・ミュージシャンのベン・シドラン。その他リッキー・ピーターソン、ショックG、トーン、ステイプルズ親子、ザ・スティールズなどが参加。169分。