天安門 Gate of Heavenly Peace


 1989年4月、失脚した中国共産党の改革派・胡耀邦(フ−・ヤオパン)の死を契機に、学生たちは天安門広場を占拠し始めた。体制の腐敗に抗議し、政治改革を要求するためである。翌5月、ゴルバチョフの中国訪問を取材する目的で北京に集結した各国のマスコミは、革命とも思える反政府運動の高まりを目のあたりにし、世界に報道した。そして6月4日、政府は学生たちへの武力による徹底弾圧を行なう。日本では“天安門事件”、英語では“Beijing Massacre/北京大虐殺”と呼ばれる、歴史に残る出来事である。
 映画は、この天安門事件の推移を、豊富な映像資料と、当事者へのインタビューなどによって綿密に解明してゆく。20年代から今に到る記録映像を駆使して中国近代史を辿る前半、'89年の運動に参加した様々な人々へのインタビューで構成された後半を通じ、作り手は、事件を生み、動かしていった要素と背景を、客観的かつ率直に呈示する。いくつかの異なる視点、異なる声の集積から真実を浮び上がらせる、ほとんどスリリングといってもいい手法は、二人の監督リチャード・ゴードンとカーマ・ヒントンの6年に及ぶ冷静で執拗な調査と取材の賜物である。賞讚に値する力作だ。189分。