「WiLd LIFe」


 異色のデビュー作『Helpless』の国内外での高い評価からウェルメイドなリメイク作品『チンピラ』を経て、青山真治監督の得体の知れない才能が、過去2作品とは全く別の世界を作り上げた。ボクサー上がりのパチンコの釘師が、事態の推移も判らないままに巻き込まれる過去の強盗事件。監視カメラに残されたビデオ映像をめぐり、パチンコ業界にうごめく利権と、警察官の汚職が事態を混乱させ、屈辱を忘れられない男が引き起こす復讐劇は、本人の思いこみとは無関係に喜劇へと転ずる。時間を交錯させ、感情の表出を極力抑えつつ、青山真治は大胆かつ繊細に悲喜劇を紡いでいく。単一のイメージでくくることの出来ないほど様々な要素や手法が混在し、サスペンス調であるかと思えば、コミカルになり、シリアスなモノローグでまとめられたりもする。『気狂いピエロ』を彷彿とさせる音楽は、混乱する物語を時につなぎ止め、時に加速させる。主演は黒沢清監督の『893タクシー』主演時に、助監督だった青山真治と劇的な出合いをした豊原功補。ミッキー・カーチスや阪本順治作品で鮮烈な印象を残す国村隼のとぼけた味わいが、印象深い。
監督 青山真治
脚本 青山真治 佐藤公美
出演 豊原功捕 ミッキー・カーチス 夏生ゆうな 國村隼
1997年 102分