「クラム」 Crumb


 60年代のアメリカのカウンター・カルチャーのヒーロー、アンダーグランドの伝説と化したコミック作家、ロバート・クラムのドキュメンタリー。アメリカでは彼のコミックは、アンダーグラウンド・カルチャーの再燃の流れにのって、今日かつてないほど多くの人々に読まれている。彼の60、70年代のアングラ誌はかなりの高値がつけられ、多くの美術館やギャラリーが彼の原画を集めている。日本ではかろうじて最も有名な作品のうちの幾つか、ジャニス・ジョップリンの「チープ・スリル」のジャケットのカバーや、“フリッツ・ザ・キャット”が知られているだけで、この作品に出てくる様な下品で、無責任で、下卑た、セックスまみれの作品はほとんど紹介されていない。彼は良識ある日常のすぐ下にある、悪臭を放ち、誰にも口にできないことを、鼻歌まじりに白日の下に曝けだす。クラムはヘンである。が、彼の家族はもっとヘンである。兄のチャールズは子供の頃はクラムより漫画がうまかったが、悪夢の高校時代を経て自殺未遂を起こし、20年間精神安定剤と抗鬱剤を飲み続け、これまたヘンな母親と暮らし一歩も外出しない。弟のマクソンは18歳の頃痴漢の常習犯で、今は安ホテルでヨガの瞑想をしながら孤独に暮らしている。クラムと25年来の友人であるテリー・ズウィゴフ監督は、狂気と才能の微妙な境界線に興味をもち、6年間のクラムとその家族へのインタビューの末にこの作品を完成させた。
監督 テリー・ズウィゴフ
出演 ロバート・クラム チャールズ・クラム マクソン・クラム
1994年 119分