「ティコ・ムーン」 Tykho Moon


 フランスの劇画(バンド・デシネ)の第一人者エンキ・ビラルの『バンカー・パレス・ホテル』に次ぐ映画作品。亡命した父の後を追って、生地ベオグラードからパリに移り住んだビラルは、デカダンスとレトロ趣味に彩られたSF的設程に、20世紀の生活的抑圧の影を滲ませ異色のテクノ・ワールドを造型した。ビラルは言う「未来を扱っていながら私の映画は未来的ではない。むしろそれは20世紀の記憶、20世紀の総括なのだ」と。
 舞台は月のどこか、パリによく似た都市。ここは専制君主マクビー(ミシェル・ピコリ)と彼の一族が支配する植民地だ。しかしマクビーの血統には遺伝的な疾患があった。青い染みが皮膚を侵してゆく奇病で、この病から彼らが救われる方法は、外科医(ジャン=ルイ・トランティニアン)による臓器移植しかない。暗殺者にもつけ狙われ、死の影におびえるマクビーは、20年前死んだはずの反体制活動家ティコ・ムーンが生きているという噂を聞きつけ大捜索を開始する。マクビーの妻(マリー・ラフォレ)によって派遣された殺し屋レナ(ジュリー・デルピー)も、ティコを追うが……。主題歌ブリジッド・バルドー。
監督 エンキ・ビラル
出演 ジュリー・デルピー ミシェル・ピコリ ジャン=ルイ・トランティニャン
1997年 107分

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