『快楽共犯者』公開記念 シュワンク・マイエルの世界


Aプロ
●ファウト Faust
 旧チェコスロバキアの伝統ある古典的アニメーションを継承しつつ、他に類を見ない怪奇と幻想の世界を生み出し、アート・アニメ界の世界的巨匠として君臨しているヤン・シュワンクマイエルの長編傑作。
 謎の地図に導かれ、一軒の家に辿りついた男は、地下室で埃まみれとなった「ファウスト」の台本を見つける。芝居の衣裳を身につけ、冒頭部分を朗読するうち。男は不思議な世界に迷いこむ……。何者かに操られるように罠に陥る男の悲劇をシュールかつシャープに描いた、迫力ある作品。97分。

Bプロ(短編集)
●石のゲーム Spiel Mit Steinen
 時計が12時を告げると始まる石のゲーム。次第に複雑になる動きが楽しい。

●ワイズマンとのピクニック Picknick mit Weismann
 無人の森でモノたちが操り広げるピクニック。のどかな風景が一転して……。

●アナザー・カインド・オブ・ラブ Another Kind of Love
 ヒュー・コーンウェルの同名曲のヴィデオ・クリップ。ヒューが目まぐるしく粘土に変身!

●肉片の恋 Meat Love
 愛しあう二つの肉片の恋の顛末を描く。

●フローラ Flora
 野菜で出来た人間が徐々に腐り果て……。

●スターリン主義の死 The Death of Stalinism in Bohemia
 スターリン主義を鮮烈に皮肉った作品。現実社会への懐疑がストレートに表明されている。

●フード Food
 様々な“食べる行為”をグロテスクなユーモアとともにつづる。

●プラハからの物語 Tales from Plague 
シュワンクマイエルの軌跡を辿る記録映画。監督J・マーシュ。計80分。

Cプロ
●快楽共犯者 Conspirators of Pleasure
 シュワンク・マイエルの最新長編。『ファウスト』に続いてライブ・アクション(実写)作品となった本作は、セリフを一切排除し、オペラや交響曲を効果的に使用、快楽を追求する人間たちの滑稽な姿と、欲望に溺れた者たちの現実を寓話的に描き出す。
 “日曜日に”とだけ書かれた手紙を受けとったピヴォイネは、早速ある準備を始めた。まず自分でかぶるための巨大な鶏の頭を作成。次に隣家に忍び込んで女性の服を拝借し、数本の黒い傘で鳥の羽らしきものを作る。彼のほかにも不思議な行動をとる5人の男女がいた。ある者は指サックを執拗に集め、またある者はパンをこねて小さな玉を作り続ける。誰もがテロリストのように人目を避け、抑え難い欲望につき動かされるかのように、各人の行為に熱中する。そして日曜日がやってきた……。87分。

監督 ヤン・シュワンクマイエル 音楽 ブラザーズ・クエイ 出演 ペトル・メイセル、ガブリエラ・ヴィルヘルモヴァー、アナ・ヴェトリンスカー 1996年 87分