『雷魚』


 ピンク映画の新しいムーヴメント“ピンク・ヌーヴェルヴァーグ”の一翼をにない、『KOKKURI こっくりさん』で一般映画デビューも果たした、瀬々敬久監督の最新作。
 利根川沿いの地方都市。かつて愛人に子供を焼死させられ、世捨て人のように生きている男(伊藤猛)がいた。ある日、男は川で雷魚を網にかける。その同じ頃、恋人に会うため一人の女(佐倉萌)が街にやって来た。彼女はそこで遊び人風のサラリーマン(鈴木卓爾)と出会う。ふとしたきっかけで交差する三人の人生が、やがて起こる惨劇を静かに準備し始めた……
 瀬々は、実話をもとに構想した寓話的物語を通して、行き場を失ったヒトの心の在り様を真摯に見つめている。もつれ、解き放たれない心が、狂気をはらんだ迫心の力で胸をうつ。共演:佐野和宏、外波山文明。

監督 瀬々敬久
出演 佐倉萌 伊藤猛 鈴木卓爾 ほか
脚本 井土紀州 瀬々敬久
撮影 斎藤幸一
97年 75分