2 デュオ


●2 デュオ
 同棲中のふたり。役者志望の男と、彼を経済的にも精神的にも支える女。ありふれた設定から始まるストーリーが痛々しいほどにリアルな肌ざわりの物語として展開する。才能に行き詰まりを感じて荒れる男。彼を勇気づける女。さらに荒れる男。我慢強い女。緊張の糸は強く引き絞られ、いつしか立場は反転する。放たれた魂は行き場を失い、取り残された者には後悔だけが残る。しかし、時計が再びもとの時間を刻むことはない。
 石井聰亙や長崎俊一、山本政志らのインディーズ作品を助監督として支えてきた諏訪敦彦(すわのぶひろ)の初監督作品。自らが8稿まで書き直したシナリオを最終段階ですべてご破算にして、10枚たらずのアウトラインだけに大幅に削ったシノプシスを手に、即興を大幅に盛り込んだ現場でのスタッフとキャストのコラボレーションを作品化している。タイトルには、主演が二人であることだけでなく、フィクションとドキュメンタリー、男と女といった、映画を成り立たせている要素の意味を込めたという。セリフの全くない台本に、生命を吹き込んだのは、神代辰巳監督の遺作『インモラル・淫らな関係』での主演が印象的な柳愛里と、『アートフル・ドジャース』の公開を控える西島秀俊。また、次の展開が全く読めない撮影現場の濃密な雰囲気を、『Helpless』『萌の朱雀』と若手監督との作品が続いている田村正毅が生々しくキャメラにおさめている。

監督・構成 諏訪敦彦
出演 柳愛里 西島秀俊 渡辺真起子 中村久美 ほか
撮影 田村正毅
美術 磯見俊裕
音楽 アンディー・ウルフ
97年 95分