シングル・ガール A Single Girl


●シングル・ガール A Single Girl
 エドワード・ヤンの『カップルズ』で、台北に紛れ込んだフランス人の少女を演じ、鮮烈な存在感を印象づけたヴィルジニー・ルドワイヤン。既にO・アサイヤス、C・シャプロルなどの作品に出演し、今最も注目を浴びている若手女優である。本作は彼女の最新主演作だ。監督はマルグリット・デュラスとの仕事や、切なく美しい作品『デザンシャンテ』で知られるプノワ・ジャコー('47年〜)。本作の、恋人の子供を身ごもった少女が決断するまでの時問をリアル・タイムで追うという手法は、ヒッチコックの『ロープ』やA・ヴァルダの『5時から7時までのクレオ』を思い出させるが、ジャコー本人は『パリところどころ』の一話『北駅』とベルイマンのテキストから着想を得たと語る。しかし、どんなカットをもはつらつとしたヴィルジニーが横切り、揺れ動く心を持ちながら自分の平凡な人生を切り開いていくという感動が圧倒的に迫るのは、数々のキャリアのうちにジャコーがたどり着いた独特の領域といえるだろう。ヴィルジニーに付き添う美しいトラヴェリング撮影はカロリーヌ・シャンプティエ。『ゴダールの探偵』でも舞台となったコンコルド・サン=ラザール・ホテルを魅惑的な迷宮に演出する。
 早朝、サン=ラザール駅のカフェで恋人レミに妊娠を告げた後、ヴァレリーはホテルの喧喋のなか、仕事に就く。レミともう一度会う約東までの一時問。それは大人への通過儀礼なのた。

監督・脚本 ブノワ・ジャコー
出演 ヴィルジニー・ルドワイヤン ブノワ・マジメル ドミニク・ヴァラディエ ほか
撮影 カロリーヌ・シャンプティエ
95年 90分