フィリップ・ガレルの世界


○フィリップ・ガレル
 16歳で映画監督デビューし、ゴダールの再来と騒がれ、ウォーホルらニューヨークのインディペンデント作家と交流を深め、実験映像へ傾倒した後、フランスに回帰し、「極北の恋愛映画」ともいうべき研ぎ澄まされた作品を発表し続けている。当館でも『ギターはもう聞こえない』を公開。
●秘密の子供 L 'entfant secret
 互いの存在と薬物依存によって、不安定な精神状態をかろうじて保つ若い映画監督アンリ・ド・モブラン)とその恋人(アンヌ・ヴィアゼムスキー)の出会いから破局までが描かれたこの作品が、ガレルとニコの実生活から着想されていることはいうまでもない。後年ガレルは同じ題材で『ギターはもう聞こえない』を製作しているが、ニコとの7年間に及ぶ結婚生活にピリオドを打った直後に作られた『秘密の子供』は、開いたままの傷口のように生々しい。

監督・脚本 フィリップ・ガレル
出演 アンヌ・ヴィアゼムスキー アンリ・ド・モブラン ほか
撮影 パスカル・ラベンザ
音楽 フランソワ・ファトン・カーン
録音 アラン・ヴィヴァル
編集 フィリップ・ガレル
82年 92分。


●愛の誕生 La Naissance de L'amour
 複数の女性との過去も現在も清算できない俳優ポール(ルー・カステル)と小説を書けない作家マルキュス(ジャン=ピエール・レオー)。既に中年の域を迎えるふたりには、取り戻すべき過去などもうどこにもない。ジャン・ユスターシュへの追憶も湾岸戦争への予感もリアリティの彼方へと放りだされるように、冬のパリの風景に溶け込む。ラウル・クタールのモノクロームの映像でつづられる。

監督・脚本 フィリップ・ガレル
出演 ルー・カステル ジャン=ピエール・レオー ほか
撮影 ラウル・クタール
音楽 ジョン・ケイル
録音 ジャン=ピエール・リュ
編集 ソフィー・クサン
93年 94分