a.b.c.の可能性 L'age des Possibles


●a.b.c.の可能性 L'age des Possibles
 フランス映画界にまた一つ新たな才能が生まれた。IDHEC在学中にアルノー・デプレシャンと出会い、彼の『二十歳の死』『魂を救え!』の共同脚本を経て監督デビューしたパスカル・フェランである。第一作『死者とのちょっとした取引』は94年カンヌ映画祭最優秀新人賞(カメラ・ドール)を受賞。つづく本作では、パリの批評家・ジャーナリストから絶賛をもって迎えられ、若者たちの圧倒的な支持と共感を得、大ヒットを記録した。フェランは、今やデプレシャンと並ぶ、フランス映画の新しい波をリードする注目の監督だ。
 フランス北東部の街ストラスブール。ここで暮らすアニエス(A)からジャック(J)までの10人の若者たち。皆、何気なく生きているかに見えて、その心の内にはそれぞれの不安を抱えている。将来が見えない焦り、人を愛しすぎる、あるいは愛せないことの悩み…etc。未来の可能性の前でつかの間たたずんでいる彼ら一人ひとりをユーモアとメランコリーを込めて描きながら、映画は人生への深い洞察を展開していく。
 キャストは名門ストラスブール国立劇場付属演劇学校の生徒たち。ナチュラルな演技は見事というほかない。挿入曲リタ・ミツコ、S・ゲンスブールほか。
監督 パスカル・フェラン
脚本 パスカル・フェラン、アンヌ=ルイーズ・トリヴィディク
撮影 ジャン=マルク・ファブル
製作 ジル・サンドーズ
製作総指揮 ジャン=ルイ・マルティネリ
95年 106分