映画新世紀宣言! T 逆襲のプログラム・ピクチェア


○かつてスクリーンを埋め尽くし、その膨大な数量から個々の作品が省みられることはなかった、数多の映画。それらはプログラム・ピクチュアと呼ばれた。低予算で、大スターが出演することもないが、高度な職人的技術で仕上げられたそれらのなかに優れた作品が混っていたことが語られるようになったのは、もはやプログラム・ピクチュアが劇場にかかりつづける余裕がなくなった、80年代以降のことだ。そして、現在。低予算映画はレンタル用のビデオや衛星放送の中で、姿形を変えて、力強く生き続けている。プログラム・ピクチュアの逆襲は、もうすでに始まっている。
●復讐 運命の訪問者
 『CURE』で風格を見せつけた黒沢清監督が、『勝手にしやがれ!』シリーズでもコンビを組んでいた哀川翔を主演に据えた刑事アクション。幼いころ両親を殺された過去を持ち、さらには妻をも殺される、拳銃嫌いの刑事、安城が挑む復讐劇がタイトでクールに描かれる。

監督 黒沢清 脚本 高橋洋 出演 哀川翔、大沢逸美、小日向文世、清水大敬、由良よしこ、六平直政、大杉漣 ほか 撮影 柴主高秀 美術 丸尾知行 97年 83分


●復讐 消えない傷痕
 前作よりさらに陰惨な雰囲気で元刑事安城の復讐は続く。暴力団に身をよせ無為な日々を送る安城が胸に秘める限りなく深い闇が静溢に語られ、息詰まるワンシーン・ワンカットのリズムは『CURE』の登場を力強く予感させる。

監督・脚本 黒沢清
出演 哀川翔、菅田俊、小林千香子、逗子とんぼ ほか
撮影 柴主高秀
美術 丸尾知行
音楽 吉田光
97年 80分


●極道黒社会 レイニードッグ
 ビデオ・ムービーを連発し、『不動』が昨年のTIME誌の世界映画ベストテンに選ばれた、三池崇史監督。彼が主演のふたりと少数のスタッフのみをつれて、全編台湾ロケを敢行した異色の映画。エドワード・ヤンの『カップルズ』のキャメラマン李以須が撮影を担当している。ビデオ発売のみで、名古屋では劇場初公開。

監督 三池崇史
脚本 井上誠吾
出演 哀川翔 田口トモロヲ ほか
撮影 リー・イーシュイ
美術 チョン・ホンシャン
音楽 サウンド・キッズ
編集 島村泰司
97年 92分


●女優霊
 『リング』の大ヒットで押しも押されぬホラー映画の第一人者となった中田秀夫監督&高橋洋脚本コンビの、血も凍る恐怖映画。撮影済みのフィルムに写り込んだ白い影が、見たものを恐怖のどん底にたたき込む。映画撮影所を舞台に、念願のデビュー作を準備中の新人監督(柳ユーレイ)率いる撮影隊に降りかかる災難が、リアルすぎる演出でたたみかけられる。

監督・原案 中田秀夫
脚本 高橋洋
出演 柳ユーレイ、白島靖代、大杉漣、根岸季衣 ほか
撮影 浜田毅
美術 斎藤岩男
音楽 河村章文
96年 75分