ゲット・オン・ザ・バス Get on the Bus


No.941 ●ゲット・オン・ザ・バス Get on the Bus
 『シーズ・ガッタ・ハヴ・イット』のスパイク・リーが名古屋シネマテークに帰ってきた。
 '95年10月、全米から150万人の黒人男性がワシントンに集まった。「ミリオン・マーチ(百万人の大行進)」に参加するためだ。「犯罪や貧困に悩まされない、少しでもよい社会、家族、自分自身を目指そう」というシンプルなテーマに多くの人々が共感した。映画はこのマーチに向かう同じバスに乗り合わせてたC人の3日間の出来事をドキュメンタリー風に描く。どこで生まれてどんな育ち方をしたかも、仕事も生き方も、てんでばらばらな男達が一台のバスに詰め込まれた。老人、若者、手錠で繋がった親子、ゲイのカップル、ゲイを嫌悪する駆け出し俳優、黒人と白人のハーフ。当然、バスの中はもめにもめる。マーチの精神そのものと、こんなにも懸け離れた彼等は、本当にワシントンに辿り着けるのだろうか? スパイク・リーの映画には、いつもホットなメッセージとクールな音楽が溢れている。タイトル・バックに流れるのはスーパー・スター、マイケル・ジャクソンの「オン・ザ・ライン」、車中で大合唱となる(彼等はケンカだけを3日間続けるわけではない)のはジェイムス・ブラウンの「Papa don't take no mess」。他にスティーヴィー・ワンダー、アース・ウィンド&ファイヤーら、新旧世代のアーティストたちがソウルフルな曲を提供している。音楽ぬきのスパイク・リー映画なんてカレーぬきのカレーライスだ。

監督 スパイク・リー
脚本 レジー・ロック・パイスウッド
出演 チャールズ・ダットン、オシー・デイビス、イザイア・ワシントン、ロジャー・G・スミス ほか
撮影 エリオット・ディビス
美術 イナ・メイヒュー
音楽 テレンス・ブランチャード
編集 レンダー・T・セールズ
96年 121分