冷たい血


●冷たい血
 '96年『Helpless』で劇場映画デビューを果して以来、驚異的なペースで作品を発表し続ける青山真治。旧作が20ケ所以上の国際映画祭に出品されるなど、海外での評価も高い彼が、前作『WiLd LIFe』の軽快さからストイックなタッチに立ち戻り、デビュー作以来のオリジナルシナリオによって作り上げた本作は、青山真治の第一期集大成とも呼ぶべき作品である。
 新興宗教幹部射殺犯を追跡していた警部補・嵯峨(石橋凌)は、犯人の三田(柳ユーレイ)に撃たれ重傷を負う。三田はすぐに捕まるが、何者かが意識を失った嵯峨の拳銃を持ち去る。次いで起こった連続射殺事件は、その拳銃を使ったものだった……。事件によって妻は嵯峨のもとを去り、彼は警察を去る。銃撃によって失った右胸の肺、その空洞はそのまま彼の心の空洞だった。その空洞を埋めるかのように、嵯峨はひとりで犯人の追跡をはじめる。手掛かりは、薄れていく意識の中で聴いた犯人の足音。それは今どき珍しい下駄の音だった……。
 恋人との愛を証明するために連続射殺魔と化す男を演じるのは、トップモデルでもあり役者としても心境著しい鈴木一真。その恋人を『高校教師』の遠山景織子、嵯峨の妻を永島暎子、嵯峨の同僚を青山作品の常連である諏訪太朗が演じる。

監督・脚本・編集・音楽 青山真治
出演 石橋凌 鈴木一真 遠山景織子 ほか
撮影 石井勲
美術 清水剛
97年 109分