炎のアンダルシア


●炎のアンダルシア Al Massir
 テオ・アンゲロプロス、黒澤明らと並んで、世界の映画人の熱い尊敬を集めるエジプトの巨匠ユーセフ・シャヒーン。1950年に発表した第一作以来、国内ではたび重なる上映禁止処分を受けながらも、30本を超える作品を世に送り出してきた。本作は、原理主義者の訴えで1年間上映が許可されなかった『移民』('94)に続く最新作。日本では『放蕩息子の帰還』('76)『アレキサンドリア WHY?』('78)以来、久々の登場だ。
 舞台は12世紀、文化の都アンダルシア(現在のスペイン南部)。自由を愛する哲学者アベロエスは、君主カリフの息子たちを初め多くの弟子を持ち、人々の心からの尊敬を得ていた。それを心良く思わないイスラム原理主義者の集団「緑の服」は、アベロエスの思想を抹殺し、君主カリフさえをも失脚させようと暗躍する。
 自由を守ろうとする人々と、自由を抑圧し他人を思い通りに操ろうとする人々の対立を、シャヒーンは歌と踊りにあふれた型破りのタッチで描いていく。ビビッドなテーマと華麗な娯楽性のおおらかな融合に、この監督の奥深く強靭な精神を感じてほしい。'97カンヌ映画祭特別賞。

監督 ユーセフ・シャヒーン
脚本 ユーセフ・シャヒーン、ハーリド・ユーセフ
出演 ヌール・シェリーフ、サフィーア・エマリー、レジナ、ファーリス・ラフーマ ほか
撮影 ムフスィン・ナスル
美術 ハーミド・ハマダーン
音楽 カマール・タウィール
編集 ラシーダ・アブドッサラーム
97年 135分