『草とり草紙』と福田克彦作品集


○福田克彦
 1943年東京生まれ。68年小川紳介率いる小川プロに参加、三里塚シリーズの助監督を6作にわたって務める。77年独立、一人三里塚に残り8oキャメラで記録を続け、85年にドキュメンタリー映画史に残る傑作と言われる『草とり草紙』を発表。以後PR映画などを撮りつつ次なる展開を模索し、いくつかの魅力的な企画の実現に動いていたが、98年1月12日、脳内出血のため逝去した。
●草とり草紙
 空港二期工事予定地に一人で住む80代のおばあちゃん、染谷かつさんの日常の記録。徹底して個人に密着することで、明治以降の日本人の軌跡、生活に根ざした思想までもフィルムに定着させた、福 田の代表作のひとつ。82分。


●三里塚には三里塚の農業があり、木ノ根には木ノ根の風が吹く
 10年間所属した小川プロを離れ、三里塚で撮った第一作。潅漑用風車制作のための実験過程の記録。36分。


● 天国は激しく襲われる
 三里塚での第二作。79年10月の飛行阻止闘争の記録。16分。 


●逝けなかった魂
 友人の妻の死をきっかけに作られたプライベート・フィルム。福田自身が初めて「撮れた」という実感を持った作品という。15分。


●アフガニスタンの村で
 アフガンゲリラに同行した友人の依頼で、編集だけ担当した作品。福田は本作を「それまでの思考を反省する出発点になった」と語った。22分。


●土の行進
 三里塚の青年たちが独自の方法で田圃を改良していく姿を追った作品。作り手である福田もまた、小川プロで培った手法から独自の映画作りへ移行する過渡期にあった。両者がクロスしたハートフルな一 編。50分。


●追跡、自白調書
 警官殺害の被告となった青年たちの自白調書を検討し、その虚偽姓を明らかにした作品。30分。


●ヒーロー伝説 ザ・カオル
 77年、東山薫という青年が機動隊のガス銃の犠牲になった。彼の 死を忘れまいとする友人たちの気持ちと、月日が経つほどに遠い存在になっていく死者との、どうしようもない距離を捉えた作品。34分。

監督 福田克彦