ねじ式


●ねじ式
 60年代に爆発的ヒットを記録した『網走番外地』シリーズや、今もカルト的人気を誇る『江戸川乱歩全集・恐怖奇形人間』で知られる巨匠・石川輝男。'93年、つげ義春の漫画を原作としたオムニバス『ゲンセンカン主人』を発表し、14年間のブランクを感じさせない快作に仕上げヒットをとばしたのは記憶に新しいが、当初その一挿話として構想されながらあまりに荒唐無稽なストーリーゆえに断念された幻の企画「ねじ式」が、石井監督自らのプロデュースによって、遂に完成した。
 つげ義春の分身ともいえる売れない漫画家ツベ(浅野忠信)。彼の日常は、さえない現実とエロスに満ちたシュールな妄想とで成り立っている。その境界は限りなく曖昧で、現とも夢ともつかぬ世界の中、ツベは次々と奇妙な人たちと出会っていく。人里離れた居酒屋に「一銭五厘で買われて来た」という娘チヨジ(つぐみ)、海辺の町の食堂で働く妖しい女(藤田むつみ)、そして海からメメクラゲに噛まれて上がってくるツベ自身
 出演は、ほかに藤谷美紀、藤森夕子、丹波哲郎(怪演)、清川虹子、水木薫。オープニングとラストの舞踏は、かつて土方巽が創設した舞踏グループ、アスベスト館による。奇想天外な展開が石井監督十八番のケレン味たっぷりな演出でつづられる、怒涛の85分。

監督・製作・脚本 石井輝男
出演 浅野忠信 藤谷美紀 藤森夕子 原マスミ 丹波哲郎
撮影 角井孝博
編集 神谷信武
音楽 瀬川憲一
製作 小林桂子
1996年 85分