● 河
 アン・ホイ監督に率いられたある映画クルーが、台北を流れる濁りきった淡水河の辺で撮影の準備をしている。彼らは河に浮かぶ死体役を探していた。淡水河は台北の繁栄の基礎になった最大級の河だが、今では街の中心からも離れ、台北中の汚水を湛え流れる河になり果て、そこに死体役として浮かぼうという者は誰もいない。スタッフの旧友だったシャオカン(リー・カンション)がその役を引き受け無事撮影は終わるが、翌日、彼は首が曲がったままになる奇病に取り憑かれていることに気づく。
 『青春神話』『愛情萬歳』に続くツァイ・ミンリャンの新作は、この只ならぬ予感に満ちたオープニングの空気を、さらに加速させ、研ぎ澄ませて、現代都市に生きる者の孤独と、愛への渇望を描いてゆく。その映像世界は、前二作をはるかに超える圧倒的な凝縮度だ。変化の速度に追いつけず希望を見い出せない者たちに、果たして再生の兆しは訪れるのか?
 緊張感に満ちた115分。

監督・脚本 ツァイ・ミンリャン
出演 リー・カンション、ミャオ・ティエン、ルー・シアオリン、チェン・チャオロン、チェン・シアンチー、アン・ホイ、ヤン・クイメイ 他
脚本 ヤン・ピーイン、ツァイ・イーチュン
撮影 リャオ・ペンロン
美術 リー・パオリン
97年 115分。