すべての些細な事柄 La Moindre des Choses


● すべての些細な事柄 La Moindre des Choses
 ラ・ボルド。それは独特の治療法で知られるフランスの精神科クリニック。二人の医師フェリックス・ガタリとジャン・ウーリーによって1953年に設立され、現在も心を病んだ人々が静かに治療と生活を続けている。お城のような建物が印象的で、型にはまった精神病院のイメージは微塵もない。患者も、食事作りや電話交換などの仕事に参加している。ラ・ボルドでは、毎年医師と患者たちが共同で上演会を行っている。今年の出し物はゴンブローヴィチの戯曲「オペレッタ」。映画は、彼らの芝居作りのプロセスを追いながら、この類い希な施設をドキュメントしていく。
 監督は『音のない世界で』のニコラ・フィリベール。その奥ゆかしくも感受性豊かな視線は、いつしか医師と患者というレベルを越え、人と人とのコミュニケーションの真実にせまり、ひいては、観客と映画との深い絆にまで高まっていく。素敵な楽曲の数々も忘れ難い、至福の105分。

監督 ニコラ・フィリベール
出演 ラ・ボルドの皆さん ジャン・ウーリー マリー・アンジェ=マルシャン 他
96年 105分