アンナ ANNA


●アンナ ANNA
 ヌーヴェル・ヴァーグ的優柔不断な主人公とフレンチ・ポップが60年代後半に幸運にも出会った、軽快なミュージカル・コメディ。広告会社の社長セルジュ(ジャン=クロード・ブリアリ)は、30代の若さにして大成功を収めている。富も名誉も思うままの彼が、広告用に使う写真の背景に写り込んでいる女の子に恋してしまったのだ。自分の力をフル活用して、パリ中に彼女の写真を大伸ばしにして貼りまくり、世間の大ひんしゅくを買うが、熱は上がる一方だ。皮肉っぽい友人(セルジュ・ゲンスブール)の言葉も、彼にはまるで届かない。とどまるところを知らない純愛をよそに、セルジュが探す幻の女アンナ(アンナ・カリーナ)は、彼の会社で働いており、眼鏡をかけているだけの違いで自分を見つけてくれないセルジュにあきれるばかりだった。メーテルリンクもびっくりな大都会での「青い鳥」的展開が、ゲンスブールのポップな音楽(多分彼のサウンド・トラックの中では最高の出来)にのって、ウェットな部分がほとんど感じられないまま進んでいく。ストーリーとは裏腹にここには苦悩する登場人物は見られない。『ガラスの墓標』のピエール・コラルニックの監督ぶりは中々見事だ。ビニール素材を多用したコスチュームのキッチュなデザインも注目されたし。尚、この作品はフランス国営テレビ放送初のカラー番組として製作されたとのこと。

監督 ピエール・コラルニック
出演 アンナ・カリーナ ジャン=クロード・ブリアリ セルジュ・ゲンスブール マリアンヌ・フェイスフル 他
製作 ミシェル・アノー
撮影 ウィリー・クラント
音楽 ミシェル・コロンビエ セルジュ・ゲンスブール
美術 イザベル・ラビエール
衣装 アニー・フランク
66年 86分