ゴダールのリア王 King Lear


● ゴダールのリア王 King Lear
 本作の製作者M・ゴランからゴダールに電話がかかってくるところから、映画は始まる。「『リア王』はいつ完成する?さっさと作ってカンヌに出品するんだ!」続いてピューリッツァ賞作家ノーマン・メイラーが『リア王』の脚本を脱稿するシーン。しかしゴダールのナレーションは彼とは決裂したことを告げる。ゴダールは旧友の写真に向かって呟く「フランソワ、僕は一体どうしたらいい?……」。
 ゴダール初のアメリカ映画は、こんな途方に暮れたトーンで幕を開ける。それは映画作家と映画産業の斗争のプロセスの記録ともいえる。追いつめられた作家は、本拠地スイスを主たる撮影地に、キャストはオールスター(モリー・リングウォルド、ジュリー・・デルピー、ウディ・アレンほか)を配し、形勢逆転を図る。ストーリーは、シェイクスピア五世による祖先の探求だ。こうして本作は、90年代ゴダールの出発を予感させる、透明な映像、鮮烈な音に満ちた傑作となった。

監督・脚本・編集 ジャン=リュック・ゴダール
原作戯曲 ウィリアム・シェイクスピア
撮影 ソフィー・マンティニュー、カロリーヌ・シャンプティエ
録音 フランソワ・ミュジー
出演 ピーター・セラーズ、バージェス・メレディス、モリー・リングウォルド、ジャン=リュック・ゴダール、レオス・カラックス、ジュリー・デルピー、ウディ・アレン、ノーマン・メイラー 他
87年 90分