浮雲会上映会 ピケをこえなかった男たち リヴァプール港湾労働者の闘い The Flickering Flame


●ピケをこえなかった男たち リヴァプール港湾労働者の闘い The Flickering Flame
 ケン・ローチフィルムモグラフィーを読んで改めて気がついたのだが、かつて当館で観た60年代から80年代の7作品、そして『リフ・ラフ』『大地と自由』『カルラの歌』ほかの90年代に至るまで紹介された作品はすべて劇映画だった。だからたとえば、『狩場の管理人』で狩猟地の四季が営みや、不味そうな腎臓パイが管理人のよりどころであるため妙においしそうに感じられたり、あるいは黒板の前でケスの飼育について話す少年の声は震え、これらはルポルタージュの些細なほころびのような醍醐味を再現していたのだ。この、手法としてよく語られるところのケン・ローチの社会構造の明確な意識化とは異なる、「裏のドキュメンタリー・タッチ」(と、私が呼ぶだけなのだが。)が、90年代の劇映画からは消えてしまったようで、ただ90年代にはテレビ作品でドキュメンタリーを何本か制作していると聞き、それを観たかった。
 さて、『A』をご覧になった方はお気づきになったと思うのだが、名古屋シネマテークにもビデオ・システムが導入された。山形国際ドキュメンタリー映画祭、PFFなどのプログラムやアート・フィルムにビデオ作品が増え、35ミリや16ミリのブロー・アップを待たずに、オリジナル素材で上映する間口が広がった。入手に当たっての嬉しいというか、もったいないような経緯に応えられるようにプログラムを膨らませて行きたいと考えている。ビデモュ労働者の雇用規約は今世紀になってから多大な努力によって勝ち取られ、守られてきたものだった。1989年、サッチャー政権下で全国港湾労働計画が廃止され、港湾が民間資本の運営に移り、労働者は日雇い契約になった。計画廃止に反対しストライキを続けてきた労働者は95年雇用通達を受ける。闘争を続ける夫、その妻、連帯を表明する各国の港湾労働者、折衝から逃げ腰の議員たち。ケン・ローチは労働者の最前線にカメラを運んだ。
監督 ケン・ローチ
1996年 50分
協力:ゼネラル・ユニオン、キノ・キネマ