●症例X 第30回ぴあフィルムフェスティバルで審査員特別賞を受賞し、ロカルノ国際映画祭では新鋭監督部門に選ばれた吉田光希監督の出世作。統合失調症の母親と、ともに暮らす36歳の男の、 単調な日常が描かれる。すべてにおいて精彩を欠いた彼らの生活を冷徹に捉えるカメラに強烈な凄みを感じさせる67分。 ●家族X 東京造形大学で(学長でもある)諏訪敦彦監督の指導を受けて製作した『症例X』で獲得したPFFスカラシップ作品。前作同様に「家族」をテーマにしているが、打って変わっての郊外のアッパーミドルな一家。会社員の夫(田口トモロヲ)、専業主婦(南果歩)、そしてフリーターの息子(郭智博)の三人家族だ。一見、満ち足りているように見える彼らの家庭だが、淡々と進む物語は、暮らしの中の歪みと、その歪みに押しつぶされつつある不安定な心の状態を薄皮をはぐように暴き続け、どこかでポキリと心の折れる音が聞こえる。それが、今、なのか、それとも遠い昔なのか。『症例X』のテーマを深化させ、厳しく現実を突きつける90分。 |
2011
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