自然と調和した職人芸のように巧緻な撮影や感情と理性がせめぎ合う深遠な演出、また表現者として慎ましくも視線を離せない俳優の存在。近年あいつぎ亡くなったヌーヴェルヴァーグの名監督達のこの傑作選には、生涯を通してフランス映画の真髄を探求し、同時に、個の作家性を鮮やかに示す驚くべき三人三様が貫かれています。ご堪能ください。 ●ある秘密 Un Secret 80年代、フランソワ(マチュー・アマルリック)は老父の失踪でパリから帰郷し父母の幸福な過去をたどり、親ナチ・ヴィシー政権下のユダヤ人の受難の陰に隠された重大な家族の秘密を解いていく。複雑な家族史を乱れなき筆致と鮮烈な撮影で明解に描き出す。音楽はキェシロフスキでお馴染みのプレイスネル。4月急逝したクロード・ミレール(『小さな泥棒』1942年生)の名作。110分。 ●刑事ベラミー Bellamy 愛妻と怠惰な休暇を満喫するベラミー警視(ジェラール・ドパルデュー)が保険金詐欺殺人事件の捜査にのり出す!死と諧謔、その細部に神を宿す巨匠クロード・シャブロル(1930年生)のエッセンス香る遺作。110分。 ●三重スパイ Triple Agent 革新的な自主製作映画を完遂し、かつその大半が日本公開済という愛され監督エリック・ロメール(1920年生)作。ロシア革命後の30年代、パリでひっそり生きる亡命者コミュニティの実在諜報事件を、厳選した当時の口語で脚本化。誤解と和解、秘密と陰謀等、好みの主題を随所にちりばめた傑作。115分。 |
2012
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