ヴァージン
●ヴァージン 処女喪失がテーマ、といえば、いかにもキワモノっぽいですが、『たまの映画』の今泉力哉、『アワ・ブリーフ・エタニティ/OUR BRIEF ETERNITY』の福島拓哉、『家族X』の吉田光希の新進気鋭の監督三人が放つ、年代別の恋愛映画と考えた方がスンナリと見られるオムニバス作品。  10代担当は今泉監督作品『くちばっか』。女子高生翠(佐藤睦)の彼は、かつて自分の姉(川村ゆきえ)にふられていて、翠は今も彼が姉のことを忘れられないのではと疑わずにはいられない……。今泉監督らしい会話劇。20代担当は福島監督作品『ゴージャス・プリンセス!』。昼はOL夜は売れない女芸人アズサ(大崎由希)は、うつむきがちで、相方と違って明るく振舞えない。同じ会社に務める男(園部貴一)に告白されるが……。ラストに向かって弾けるスピード感は福島監督の新境地。30代担当は吉田監督作品『ふかくこの性を愛すべし』。まじめだけが取り柄な35歳の薬剤師・和代(正木佐和)。単調な日常を送る彼女の視界に突然に高校生の遼(ノ俊太郎)が飛び込んでくる。低温感が魅力の緻密な映像の雰囲気は吉田監督ならでは。127分。

舞台挨拶決まりました!
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 福島拓哉監督、大崎由希さん、正木佐和さん
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 今泉力哉監督


『ヴァージン』
  福島拓哉監督インタビュー
※オムニバス映画『ヴァージン』公開を目前に、当館との縁も深い福島拓哉監督にお話しを伺いました。(構成=編集部)

──『アワ・ブリーフ・エタニティ』以来のシネマテーク御帰還ですが、『ヴァージン』製作の経緯は?
 初期の段階で会社側から話をもらいました。塩月・小林両プロデューサーとも以前から付き合いがあったので、3監督の中でたぶん僕が最初に決まったと思います。その際にロストヴァージンネタ、20代担当ということが指定されていて、あとは自由でした。いつもは自分でホンを書きますが連ドラの現場中で多忙だったため、脚本に井川広太郎を起用して二人で10本くらいプロットを作り、最終的に『ゴージャス・プリンセス!』に決まりました。
──正統派の青春映画と思いました。見どころを教えてください。
 いろいろありますが、集約すると主演の大崎由希さんです。エンタメ作品なので当然だけど、彼女が輝くために濃いサブキャストたちが大活躍する構成なので。ただ、正統派かどうかは微妙かも。そう見せてはいますが、サブカル系アート映画のノリも随所に出しています。安心して普通に楽しめるエンタメ作品ですが、いわゆる監督術というか細かいトライが結構あるので、興味がある人はそのへんも気にしてもらえると面白さが倍増すると思います。
──もともと恋愛というテーマには格別のこだわりがあるのではないですか?
 そうですね。どんな映画も恋愛の要素は入ってくるものだと思いますが、そういう意味では特に重視する要素かもしれません。恋愛というのは人と人が関わることをダイレクトに描けるので、ドラマチックになりやすいのだとも思います。あとはまあ、僕が基本的にイタいダメ男なので、いつも恋愛のことばっか考えちゃう、というだけかも(笑)。
──女性キャストがメインという作品も珍しい気がしますね。演出上の変化は何かありますか?
 いつもはアート映画というか、話などわからなくてもかっこよければいい、という感じの映画を作るのですが、今回はエンタメをやろうと思いました。単純に今回の興味の問題で、演出上の変化というほどのものではないです。むしろエンタメ演出というのは基本的には技術重視なので、まあプロなら誰でもできる、とも思います。ただ、そういうエンタメ演出の中で、僕は「軸ずらし」と呼んでるのですが、映画論的な意味で新しい演出法にこっそりトライしてもいます。
──単独作と異なるオムニバス作品を演出する違和感はないですか? また、今泉監督と吉田監督の2作品はいかがでしたか?
 かつて『over8』というオムニバスシリーズをプロデュースしていたので、違和感は特にないです。それに今回は3本まとめて観るのが重要だと思っています。今泉くん吉田くん共に傑作なので、同じ企画をやれたことが素直に嬉しいです。『くちばっか』は彼らしい語り口と、開いているし閉じているファンタジックな素晴らしいラストが心に残ります。『ふかくこの性を愛すべし』は巧妙に作りこまれたカッティングにも関わらずキャストの魅力を気配に至るまで感じさせてくれます。
──劇場公開映画では、今までのインディーズ作品と多少違うと思います。改めてデビューという感じはないですか?
 まったくないです。デビューして10年以上経つので。そういう意味では今回は新鋭監督設定なのに僕一人おっさんで申し訳ないです(笑)。それに今回は商業映画というやつなのかもしれないけど、僕は商業映画という言葉の意味がよくわからないのです。どんな映画でも劇場でお客さんはお金払うわけで、制作の経緯は関係ない。だから毎回、劇場公開ということだけが非常に重要です。お金欲しいという意味ではなく作品のクオリティとして。
──次回作、決まっていたらお話しを。
 決まってません。もちろん撮りたい企画ストックはたくさんあります。今も新しく脚本を書こうかと思っているところです。ただ、監督が自分で発信する企画の実現は非常に難しいのが映画界の現状なので、話が来たら何でもやっていこうと思っています。長年に渡りテレビやCMなど含め様々な映像演出を経験して、どんな企画にも対応できる演出技術はもう身に着いたと自負しているので、状況に応じて自分の力を駆使していきたいと思っています。
     

2012
6/2(土)
〜6/8(金)

20:00

 

当日券のみ
一 般 1500円
大学生 1400円
シニア 1000円
中高予 1200円
会 員 1200円

 
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