長良川ド根性
●長良川ド根性 岐阜県郡上市を源流に、伊勢湾にそそぐ長良川。その清流は自然の宝庫であり、我々にも馴染み深い存在だ。しかし今、長良川の河口には、流れを遮る全長661mの巨大な堰がある。1500億円を投入したこの建設事業は、推進派と反対派の長い攻防の末に完成した。本作は、河口堰に運命を左右された漁師たちの、歴史と現在を追ったドキュメンタリー。
 三重県桑名市の赤須賀漁協。彼らは、河口堰に最後まで反対したが「一漁協のエゴ」「中部の発展を阻害する」といった批判を受け、建設を受け入れた。それから16年、組合長・秋田清音を中心とした様々な取り組みの末、今では若い漁師も増え、浜には活気が戻っている。しかし、2011年、愛知県知事選に立候補した大村秀章は、河口堰の不要論を語り、当選する。堰があることを前提に漁法を再構築し、ようやく軌道に乗せた赤須賀の組合長・秋田の怒りが爆発する。俺たちは、どこまで政治に翻弄されるのか……? 切っ先鋭い問いを投げかける、必見の80分。



11/24(土) 10:40&12:40 の回
水道橋博士さん、阿武野勝彦監督 舞台挨拶&トークあり




『長良川ド根性』
阿武野勝彦 片本武志 両監督に聞く

──この映画の源流からお聞きします。なぜ長良川河口堰をテーマにしたのでしょう?
阿武野(以下A):東海テレビの開局50周年に当たる2008年前後から、過去にこの地域で起きた様々な問題を、今、捉え直したら何が見えるのかというテーマで、いくつかのドキュメンタリーを制作してきました。たとえば徳山ダム(『約束〜日本一のダムが奪うもの〜』)、戸塚ヨットスクール(『平成ジレンマ』)、四日市公害(『青空どろぼう』)などです。『長良川ド根性』は、その最終章のつもりで取り組んだものになります。
──当時から、河口堰には関心があったのですか?
A:私が岐阜支局にいた90年代前半は、ちょうど河口堰反対の市民運動が盛り上がっていた時でした。でも、河口堰と環境問題と市民運動という3つが、何か単純すぎて自分の中でどうにも焦点を結ばない。河口堰の有効性にはもちろん疑問があったが、市民運動にも、どこか距離を感じながら取材をしていたというのが、正直なところです。
──そんな経験もあったからでしょうか、今回の映画は、河口堰と共存する道を選んだ赤須賀の漁師たちが主軸になっています。
A:最初からそこに絞って作ろうと思っていたわけではありません。当初は、防災、治水、利水、環境、漁業など、いくつかのパートに分けた構成で、河口堰を総括するというプランを考えていました。
──共同監督の片本さんは、現場での取材を担当されていますね。
片本(以下K):私は98年に東海テレビに入社しています。河口堰はすでに在りましたし、関心も知識も特にありませんでした。ですから、この企画がスタートして、まずは上流から河口まで、たくさんの漁師の人達の話を聞き、市民運動に関わっていた人に会い、運用する側である水資源機構、国交省などにも行って、手探りで取材を続けました。
──そんな中で、映画の主人公となる、赤須賀漁協の秋田清音組合長が浮上してきたのですか?
K:秋田さんは、基本的に取材拒否でした(笑)。でも、ひたすら通って話を聞くうちに、単に賛成とか反対という言葉に収まらない、河口堰を背負って生きている人間の重みのようなものが感じられ、重要な存在だと思うようになってきたんです。
A:撮影したものをまとめた第一稿を見てみたら、どこに焦点が絞られているのか曖昧だったんですね。でもその中に河口堰開門調査検討会のシーンがあった。そこでの秋田さんの発言に本当に胸が震えるような感動を覚えたんです。かつて河口堰建設に激しく反対し、その後は河口堰の存在を前提に漁を立て直し、そして今また河口堰不要の声にさらされている秋田さんという人。「ここで彼が話している言葉の真意が分かれば、もうそれでいい。あとは削ぎ落とそう」と、方向を固めていきました。
──検討会は、出来上がった映画のクライマックスと言ってもいいですね。一方、河口堰の影響で魚が捕れなくなったのに、上流で意地でも漁を続ける大橋兄弟のシーンも素晴らしい。変わり果てた河口で漁業の再生に取り組み活気が戻った赤須賀と、鋭い対照を成している。
A:大橋兄弟は、長良川の漁師を象徴する存在です。ただ彼らと河口堰という構図は、環境問題と結びついて、これまでも語られ描かれてきた、ひとつのスタンダードだと思います。それに対して、秋田さんは、ものすごく異物感がある人です。彼が言っていることは、ただの漁師の発言じゃない。“環境”の一語で片付かない生活感や時間軸、哲学に支えられたものなんです。片本は「秋田さんは恐い……」と言いながらもトライして、最終的にきちんとしたインタビューも撮影できた。こういう生き方を貫いている人間が、私たちの地域にいることが、とても嬉しいし、今、多くの人に知ってほしいですね。
K:秋田さんは、河口堰という切り口だけにおさまらない人です。自然と人間というものを体で感じているし、未来へ向けて物事を考えている。「うちの漁業は、孫の世代、ひ孫の世代まで残す」と何百回も口にされてましたから。そこは、どうしても描きたかったところで、河口堰から始まった企画ですが、より広いメッセージを込められたものになったと思っています。



2012
11/24(土)

10:40
12:40
18:30

11/25(日)
〜11/30(金)

12:30
16:30
18:30

12/1(土)
〜12/7(金)

10:30
14:05

12/8(土)
〜12/14(金)

10:30

 

前売券
※前売券販売は11/23(金)までです。
一 般 1400円
大学生 1400円
会 員 1200円
当日券
一 般 1700円
大学生 1500円
シニア 1000円
中高予 1200円
会 員 1300円

オフィシャルサイト

監督 阿武野勝彦、片本武志
ナレーション 宮本信子
プロデューサー 阿武野勝彦
音楽 本多俊之
音楽プロデューサー 岡田こずえ
撮影 田中聖介
音声 小原丈典 
水中撮影 岩井彰彦、神辺康弘、森恒次郎
効果 柴田勇也
TK 須田麻記子
CG 多田基朗
題字 山本史鳳
アソシエイトプロデューサー 安田俊之
編集 奥田繁
協力 長良川市民学習会、長良川水系・水を守る会、桑名市博物館

2012年 80分