○ミヒャエル・ハネケ(『白いリボン』)やニコラウス・ゲイハルター(『いのちのたべかた』)など透徹した視線で文明の斜陽を見つめる映画監督を輩出してきたオーストリア映画から、鬼才ヘルツォーク監督やハネケもそのファンだという、ウルリヒ・ザイドル監督の新作パラダイス・トリロジーと未公開の1作品を公開。3部作の主人公は三人三様のヴァカンスへと駆り立てられるウィーン在住の女たち。精巧な映像とアンビエントな音響設計がまるで社会からの無言の圧力のように彼女たちを囲い込み、ゆるやかな地獄へと堕としめていく。どの作品から見ても、その衝撃の世界観にハマること間違いなし! 4作品の撮影は名匠エド・ラックマンが共同担当した。 ●パラダイス:愛 Paradies Liebe 介護士のテレサ(マルガレーテ・ティーゼル)は姉アンナ・マリアに娘メラニーと猫を預けてケニアの休暇へ。オーシャンビューホテルの徹底したサービスに加え、滑稽なまでに白人観光客に群がるビーチボーイたち。楽園の高揚と孤独に追いつめられたテレサはいびつな愛を模索し始める。120分。 ●パラダイス:神 Paradies Glaube カトリック信者でレントゲン技師のアンナ・マリア(マリア・ホーフステッター)は、祈りと懺悔と啓蒙活動と、自らを鞭打つ奉仕で休暇を神に捧げる。布教先の人々の堕落に悩まされながらも静かな日々を送るが、2年前に家を出奔した異教徒の夫ナビルが突然帰ってくる。113分。 ●パラダイス:希望 Paradies Hoffnung 13歳のメラニー(メラニー・レンツ)は休暇の間、ダイエット合宿に送られる。規律に縛られた生活の中でも親やボーイフレンドへの不満を抱えた肥満女子たちは生き生きと青春を謳歌し、メラニーは父親ほど歳の離れた医師に初めての恋をする。禁断の恋の息苦しさを瑞々しく描く。91分。 ●インポート、エクスポート Import/Export 2007年に製作され、エレバン国際映画祭最優秀賞に輝いた傑作。政情不安のウクライナ。原発の街で困窮し壮絶なオンラインポルノで副業する看護士オルガは乳児を預けてオーストリアへ出稼ぎに。一方、オーストリアでも仕事に就けないポール。厳しい現実を精一杯生きる二人の入国と出国を対位して描く。邦画『サウダーヂ』にも通底する重要作品。135分。 |
2013
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