○ジャック・タチ(1907〜1982) ミュージック・ホールの舞台出身の喜劇俳優。ラグビー選手だった長身の体躯を活かした、パントマイム的な芸風でサイレント喜劇時代から活躍し、後に監督業も。モダンなセンスと破壊力のあるギャグで、オーソン・ウェルズやフランソワ・トリュフォーなど多くの映画人を虜にした。 Aプロ タチを破産に追い込んだが、近年再評価されてきた超野心作『プレイタイム』(Playtime)。総制作費は15億フラン (当時のレートで約1093億円!)、資金不足での中断は6回、全編70mm撮影。アメリカ人観光客とタチの当たり役ユロ氏が、タチ・ヴィルと呼ばれた超モダンな架空都市で繰り広げる邂逅の物語。類を見ないほどの壮大かつ美しいセットはまさに眼福。124分。 Bプロ タチ=ユロ氏のイメージを決定づけた『ぼくの伯父さん』(Mon Oncle)。資産家の父が建てたモダンな邸宅に住む少年と、下町育ちの伯父さんの交流を描く。野暮ったい印象のユロ氏がみるみる魅力的に見えてくる不思議な116分。常連客がおしゃべりやゲームに興じる午後のカフェの様子を垣間見せる短編『家族の味見』(Degustation Maison)は、タチの娘ソフィー監督作品。優しい視線が確かに受け継がれている14分。 Cプロ 自作のキャンピングカーを出品するためにオランダのモーターショーへ向かうユロ氏の珍道中を“交通コメディ”に仕立てた『トラフィック』(Trafic)は97分の完全版! 若き日のタチがドタバタ観光ガイドを演じる短編『陽気な日曜日』(Gai Dimanche)は、ポンコツのオープンワゴンで郊外の城をご案内!?『トラフィック』を予感させる22分。 Dプロ 遺作であり日本劇場初上映 『パラード』(Parade)は、スウェーデンのテレビ局に招かれて製作した作品。サーカスを舞台にした物語は、コメディアンと観客の熱気が見事に溶け合い、タチのパントマイム芸も堪能できる90分。『乱暴者を求む』(On demande une Brute)は、タチがレスラーとしてリングに上がり、身体能力の高さに唸るほかない25分。 Eプロ 華麗な郵便配達人フランソワの自転車が疾走する『のんき大将 脱線の巻』(Jour de Fete)は、繰り返し何度でも見たくなる傑作。今回は87分の完全版。『郵便配達の学校』(L’Ecole des facteurs)はタチの初監督短編。16分。『フォルツァ・バスティア'78/祝祭の島』(Forza Bastia 78 ou L’ile en fete)は異色のサッカードキュメンタリー! 28分。 Fプロ 『ぼくの伯父さんの休暇』(Les Vacances de Monsieur Hulot)はリゾートでのユロ氏のハチャメチャぶりが光る 89分。『ぼくの伯父さんの授業』(Cours du soir)は、『プレイタイム』中断時に即興的に作られた、ナンセンスな笑い爆発の29分。『左側に気をつけろ』(Soigne ton Gauche)は、ひょんなことからボクシングをやることになった男を、タチが形態模写のギャグを駆使して演じる14分。 |
2014
|