○アレハンドロ・ホドロフスキー:1929年チリで出生。ロシア系ユダヤ人。サンティアゴ大学中退後にパリで舞台・映画芸術を遊学、当時の映像作品はコクトーから絶賛された。1970年にメキシコで撮影した『エル・トポ』が都市のナイトシアターで大ヒット。ウォーホル、ミック・ジャガー、寺山修司、横尾忠則らアーティストを熱狂させ、魅了されたジョン・レノンは次作『ホーリー・マウンテン』('73年)と含め配給権を取得。その大成功でさらなる評価を確立した。 90年代以降、長らく製作を離れていたが、昨年のカンヌ映画祭最大の呼び物として本2作品がワールドプレミアに登場。再びホドロフスキーの時代が降臨する。 ●ホドロフスキーのDUNE Jodorowsky’s DUNE 1975年、ホドロフスキーはSF巨編『DUNE』に挑み、美術デザインにメビウス、H・R・ギーガー、クリス・フォス、脚本ダン・オバノン、出演ダリ、M・ジャガー、O・ウェルズ、音楽ピンク・フロイドと、類まれなプロジェクトが発進。しかし映画はまだ『スター・ウォーズ』も『エイリアン』も知らず、無謀なSFとして製作資金で頓挫。後のD・リンチ監督にも飛び火する呪われた企画として、映画製作から生じる壮絶なジレンマを関係者が語りおろす。残存している絶品のアートワークやホドロフスキーの脳内妄想といった、言葉にはできない遺恨や愛がカオスと化し、完成作さながらに迷宮の像を結ぶ恐るべき90分。 ●リアリティのダンス La Danza de la Realidad 『ホドロフスキーのDUNE』まで35年間決別していた製作者ミシェル・セドゥーと再会、85歳の船出となる最高傑作! 軍事政権下のチリでスターリン主義を信奉する父ハメイ(ブロンティス・ホドロフスキー)と元オペラ歌手で夢想家の母サラ。対極する両親の魂に苛まれ学校にも馴染めないアレハンドロに寄り添う者は、老年期を迎えてなお神と世界に対峙する現在のホドロフスキー自身。一方、軍政の中でアナーキストから慈善家、宗教信者へと思想の赴くままさすらう父。瞑想の行者や道化、傷病兵などがふいに顔を出す鮮烈な幻影と人間の魂を憐れみながらも肯定するゆえの妄想が、寺山やフェリーニの抒情的な自伝作品のように見事に昇華され、ひれ伏したくなるほど美しい作品となった。130分。 |
2014 7/19(土)〜
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