○イエジー・スコリモフスキ(1938〜):戦後ポーランド映画の若手監督として『水の中のナイフ』『バリエラ』で国際的な評価を得るが、反体制的な姿勢を問題視され母国を出奔。以後、苦難のうちに西側各国での制作を余儀なくされた。視覚・聴覚を挑発する卓抜した映像の疾走感は今も衰えず、映画の最前線で制作する巨匠である。 ●出発 Le depart ゴダールの『男性・女性』のJ=P・レオーとC=I・デュポールを迎えベルギーで制作。『大人は判ってくれない』のレオーがもう一つのアントワーヌ・ドワネルの青春を物語るように、レーサーに憧れる美容師の躍動感満点の恋を美しいブリュッセルの街並み背景に描き出す。K・コメダの伴奏、モダンなクルマとファッションは正にボーイズ版『ひなぎく』。91分。 ●シャウト The Shout 英国の壮麗な建築の精神病院で起こる謎の集団死。物語は風光明媚なデヴォン州の砂丘の村で暮らす音楽家(ジョン・ハート)と妻の恐怖体験へと遡行する……。現実に潜む異端の呪術と狂気を追求し、妄想と真実の境界に触れていく怪奇傑作。カンヌ映画祭受賞作。86分。 ●ムーンライティング Moonlighting 1981年秋、ロンドンの空き家の改装工事に、低賃金のポーランドから3人の素朴な労働者を引率し不法滞在するノヴァク(ジェレミー・アイアンズ)は、あらゆる手段で社命の経費節減を断行するが、12月、母国で独立自由労組”連帯”の弾圧が勃発し戒厳令が敷かれる……。アイアンズが社畜と化して法を破りまくるサスペンスコメディは、全世界を揺るがした祖国の大事件を異国で知る切なさとともに不思議なハーモニーを奏で、深い感動を呼ぶ。97分。 ●アンナと過ごした4日間 Cztery noce z Anna 偶然見たレイプ事件で逮捕された無実のレオンは出所後、自宅の向いの看護師寮を覗き始める。そこにはレイプ被害者のアンナが住んでいた……。時系列を妖しく錯綜させ、奇妙な愛を鮮烈に描く。40年以上の時を経て母国で制作した。87分。 ●エッセンシャル・キリング Essential Killing 米兵を殺したタリバン構成員が、米軍の追跡から逃走する姿をひたすら見つめる事に徹し、9.11以後の複雑化する世界観を照射する傑作。砂と雪を裂いて走るヴィンセント・ギャロの熱演も圧巻。83分。 |
2014
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