○シャープな映像感覚と文学的な象徴性、緻密なリハーサルを基にした演技の即興性を極限まで追求した、スウェーデンの巨匠イングマール・ベルイマン(1910〜2007)。ウディ・アレンやスピルバーグ、キューブリック、そして、トリュフォー、ゴダール等ヌーヴェルヴァーグの作家まで、多くの監督たちに影響を与えてきました。今回はまさに黄金期と呼ぶにふさわしい時期の傑作を揃えたラインナップをお届けします。 ●夏の遊び Sommarlek ベルイマン自身が学生時代に書いた小説をもとにした青春映画の傑作。人生の選択に迷うバレリーナが思い出の地を訪ねる。巧みなフラッシュバックが縦横に交錯し、苦悩の普遍性が露わになる。ゴダールも絶賛の90分。 ●夏の夜は三たび微笑む Sommarnattens leende ある夏の日に郊外の別荘に集まった人々の恋の行く末を描く、軽妙な艶笑譚。ベルイマン作品では異色のコメディだが、20世紀初頭の上流階級を洗練させた衣裳と絶妙な演技で描くセンスには脱帽。104分。 ●第七の封印 Det Sjunde inseglet ペストが蔓延する中世ヨーロッパを舞台に、十字軍の遠征から帰途についた騎士が、彼を追う死神に自らの命を賭けたチェスの勝負を挑む。生と死の意味と重みが含蓄のある演出で語られる哲学的寓話。97分。 ●野いちご Smultronstallet 人生の終わりを迎えつつある老医師の一日を通じて、人間の老いや死、家族をテーマに、夢や追想を織り交ぜて描いた叙情的な作品。アンドレイ・タルコフスキーがオールタイム・ベストの一本として挙げている。91分。 ●処女の泉 Jungfrukallan 16世紀のスウェーデン。少女の身に起きた悲劇と、娘を失った父親の復讐、そして、彼女を妬みつつ悲劇に恐怖する召使いの娘の物語を重層的に描く。ベルイマンが敬愛する『羅生門』の影響が強い、代表作中の代表作。89分。 ●冬の光 Nattvardsgasterna 信者の自殺に際し、祈ることしか出来ない牧師の苦悩を描き、神の不在に肉迫する、入魂の逸品。『鏡の中にある如く』『沈黙』と合わせて沈黙三部作と呼ばれ、なかでもベルイマンの最高傑作との評価も高い。82分。 |
2014
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