依存魔
豚の咆哮とともに人間の異常な愛と狂気を寓話的に描いた衝撃作『変態村』(04)、実在した変態連続殺人鬼カップル、マーサ・ベックとレイモンド・フェルナンデスの実話を描いた問題作『地獄愛』(14)で世界各地の映画祭を騒然とさせ、ヨーロッパ映画史にその名を刻まれることとなったファブリス・ドゥ・ヴェルツ監督。常にグロテスクで血まみれながらも、純粋な愛の形を描いてきたヴェルツ監督の『変態村』『地獄愛』につづく<ベルギーの闇3部作>の最終章となるのが『依存魔』だ。これまでの目を背けざるを得ない作風から一転、美しい自然の風景とともに描かれる孤独な10代の少年少女の絶対的な愛。どうしたことか、まさかの瑞々しく語られる物語だ。少年ポール役は『ジュリアン』(17)で離婚した父と母の間で揺れ動く息子役を演じ天才子役誕生と注目されたトーマス・ジオリア。少女グロリア役を演じるのは、ミヒャエル・ハネケ監督の『ハッピーエンド』(17)でイザベル・ユペール他屈指の実力派俳優陣と共演し、ひときわ存在感が輝いていたファンティーヌ・アルドゥアン。今欧州で勢いのある若手俳優を迎え、周囲の大人たちから逃げる少年少女の逃避行を詩的に美しく切り取った映像は、テレンス・マリック監督作『地獄の逃避行』(73)を彷彿とさせる。『依存魔』で遂に完結となる<ベルギーの闇3部作>とは、ベルギーのアルデンヌ地方を舞台になぜか必ず“グロリア”というキャラクターが登場、どこかにローラン・リュカが出演して狂気の愛を描くトリロジーだが、『変態村』ではトビー・フーパー監督の『悪魔のいけにえ』(74)、『地獄愛』はレナード・カッスル監督の『ハネムーン・キラーズ』(70)など、今作でも相変わらずアメリカ映画からの強い影響が伺える。なお、ファブリス・ドゥ・ヴェルツ監督は『依存魔』に続く最新作『Inexorable』(21)を完成させており、現在日本未輸入のこの新作には、グロリアというキャラクターが登場、そのフルネームがグロリア・バルテルであることが判明している。バルテルは『変態村』で主人公をいたぶる宿のオーナーの名前。果たして<ベルギーの闇3部作>は本当にトリロジーなのだろうか・・・。(公式サイトより)
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