『戦争のはらわた』『追想』

　第二次大戦の記憶が失われつつある時代に映画が伝え得る戦争とは何だろう。誇張と真実がせめぎあい、有無名の英雄を生んできた戦争映画の数々。本企画は戦争の暴力性や生命の軽視に抗った人びとの記憶を刻印する筋金入りの傑作を紹介。
●戦争のはらわた　Cross of Iron　巨匠サム・ペキンパーが膨大な資料を繙きリアリズムを追究した戦争映画の金字塔。両陣営がかつてない犠牲を払い大戦の流れを変えたロシア戦線。後退中のドイツ軍に所属する、漂う殺気の中に部下や子供さえ惹きつける心根のスタイナー伍長（ジェームズ・コバーン）と貴族の末裔でヒトラー贈呈の「鉄十字章」（原題）に執着するストランスキー大尉（マクシミリアン・シェル）。米独の名優が火花を散らすスター映画としてだけでなく戦争のむごさをとことん衝いた反骨の作家による伝説の至宝。133分。
●追想　Le Vieux Fusil　『冒険者たち』の名監督ロベール・アンリコが戦後30年を経て描いた反戦映画の名作。主演フィリップ・ノワレ（『地下鉄のザジ』）とヴィスコンティのミューズ、ロミー・シュナイダーが第一回セザール賞男優・女優賞受賞。占領下フランスの小都市で暮らす外科医夫婦。戦火を逃れ疎開した妻と娘がパルチザン狩りの議性となったことを知った医師は「古い銃」（原題）を手にナチハンターへ豹変する。102分。

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