イランからみる世界『ホームワーク』上映&中西久枝さん レクチャー ニュース映像で、デンマークで描かれた風刺画への抗議行動と昨年の「フランス暴動」を起こした、中東や旧植民地出身の移民系第二〜第四世代の若者たちを見て、ふいにアッバス・キアロスタミ監督が映画『ホームワーク』で取材した子どもたちを思い出しました。彼らもすでに20代になっているでしょう。 イランに実在するシャヒッド・マスミ小学校で、宿題を忘れてきた子どもに、キアロスタミ監督が理由を問います「なぜ宿題をやらなかったか ? 」。家の手伝い、親が文盲であること、子どもたちのいきいきとした表情と声がつむがれていきます。時に、いささか厳しくも感じられる監督との応答を通して、社会や学校や家庭の問題を、デリケートに、絶妙に、浮き出してゆくキアロスタミ監督の魔法のようなドキュメンタリー演出に驚かされる傑作です。 また、先の「フランス暴動」の映像を見たとき、おそらく多くの方が、マチュー・カソヴィッツやアルノー・デプレシャンやダルデンヌ兄弟の映画のなかで既に始まっていたことを、衝撃的に思い出されたのではないでしょうか。名古屋シネマテークの不定期企画「映画の放課後」は、映画を通して考えてみようという、いわば夜の寺子屋です。机はありませんが、宿題もありません。いや、ひょっとしたら宿題はあるのかもしれません。ともあれ、眠れぬ夜、もの足りない夜を、映画作家、批評家、専門家の方々のレクチャーとともに、スクリーンで見られる機会の少ない作品をご覧いただく企画です。 第1時限目は、1月末にもイランへ行かれたという中西久枝さん(名古屋大学大学院国際開発研究科教授)のレクチャーで、国際的に緊張関係の増すイランとアメリカ、そしてイランに暮らす人々の現在について、お話ししていただきます。 皆様のご来場をお待ちしております。 |
2006 3/31(金)
当日券のみ 1000円均一 監督:アッバス・キアロスタミ(『友だちのうちはどこ? 』) 1989年/イラン映画/カラー/86分/提供:ユーロスペース ロカルノ国際映画祭銅豹賞/国際批評家賞/芸術協会賞/国際キリスト教協会賞/国際芸術映画同盟賞 中西久枝(なかにしひさえ)さん |