『三里塚に生きる』ROAD SHOW &公開記念「小川プロ“三里塚”傑作選」

 時代の移り変わりとともに忘れられることであっても、当事者にとっては現在進行形であり続ける場合がある。成田空港建設をめぐる、反対闘争。開港から40年近くの時間は、闘争そのものを忘却の彼方に消し去ろうとしているのかもしれないが、激烈な闘争の現場となった三里塚には、地面すれすれに飛び交う飛行機の爆音の下で、今も人が住み、畑を耕す暮らしがある。三里塚で7本の記録映画を作った小川紳介監督が、深くこの土地に関わる端緒となった『日本解放戦線・三里塚の夏』の撮影を担当した大津幸四郎と、『まなざしの旅 土本典昭と大津幸四郎』の代島治彦は、現在の三里塚の風景を撮り、そこに暮らす人々を撮り、忘れられようとする時間そのものを描こうとしている。
 現在と交錯するアーカイヴ映像は、小川プロの諸作からだけでなく、膨大なラッシュフィルムからも選ばれているし、彼らが山形へと去った後も三里塚で撮影を続けて『草とり草子』にまとめた福田克彦監督の残した映像、また北井一夫の写真集「三里塚」(71年)と撮りおろしのスチール写真も構成される。かつての映像の中で人々は若く、激しい。主張も強い調子で語られ、すべてが熱を帯びている。一方、現在の映像の中では、誰もが穏やかな表情で、静かに言葉が紡がれる。ただ、いくつかの死が話題になる時、静寂は切り裂かれ、長い歳月が一気に現在へと押し寄せる。吉行和子と井浦新が朗読するふたつの文章、さらに大友良英が奏でる“かなしみのマーチ”が、現在進行形の過去を露呈させる。撮影とともに共同監督した大津幸四郎は、去る11月28日に肺がんで永眠。『三里塚に生きる』は、遺言のように最後の監督作となってしまった。ご冥福をお祈りしたい。140分。
○三里塚で小川プロの活動をスタートし、その場所で生活をともにしながら作り続けた小川紳介監督作品も連続上映。『日本解放戦線・三里塚の夏』(108分)をはじめ、農民の姿に強くフォーカスした『日本解放戦線・三里塚』(141分)、強制収用をめぐる攻防を描く『三里塚・第二砦の人々』(143分)、飛行審査阻止のための巨大鉄塔を建てる『三里塚・岩山に鉄塔が出来た』(85分)、そして、闘争を支える日々の暮らしにカメラを向けた『三里塚・辺田部落』(146分)。現在を読み解く視線が随所に感じられる傑作群に刮目されたし。

2015
1/24(土)
〜1/30(金)

三里塚に生きる 12:40

1/24 15:20 三里塚の夏
1/25 15:20 三里塚
1/26&27 15:20 第二砦…
1/28&29 15:20 岩山に鉄塔…
1/30 15:20 辺田部落

1/31(土)
〜2/6(金)

三里塚に生きる 16:20

『三里塚に生きる』
前売券
※前売券販売は12/22(月)までです。
一 般 1400円
大学生 1400円
会 員 1200円
当日券
一 般 1700円
大学生 1500円
中高予 1200円
シニア 1100円
会 員 1300円
学生・シニア会員 1000円

「小川プロ傑作選」
一作品 1200円