特集/土本典昭監督と小川紳介監督

○土本典昭 1928年岐阜県土岐市生まれ。岩波映画製作所を経て、'63年『ある機関助士』(37分)でデビュー。東京のタクシー運転手の労働実態に目を向けた『ドキュメント路上』(54分)を経て、'69年、全共闘運動の関西の雄・滝田修の活動を追った①『パルチザン前史』(120分)を発表。滝田が後に指名手配され逃亡生活に入ったこともあって、ある時代を象徴する傑作として後世に残るものとなった。
●'71年、水俣病を世界に知らしめた②『水俣─患者さんとその世界─』(167分)を発表。第一回世界環境映画祭グランプリを得た本作を契機に、土本はドキュメンタリー映画作家として長く、そして深く水俣と向き合うことになる。チッソ本社で直接交渉に臨む患者達を追った③『水俣一揆─一生を問う人びと─』(108分)に続き、水俣病の医学における研究史と今日に残された課題を検証する画期的作品『医学としての水俣病─三部作─』④第一部82分、⑤第二部103分、⑥第三部91分)を発表。'75年の⑦『不知火海』(153分)では終わらない水俣病の苦悩と、水銀に侵されながらも再び命を宿して再生していく自然界の豊穣さを織り込んで、連作中のピークを成す。'81年⑧『水俣の図・物語』(111分)では丸木位里・俊夫妻の創作を追い、石牟礼道子の詩、武満徹の音楽とのコラボレーションを試みた。'99年⑧『回想・川本輝夫 ミナマタ-井戸を掘ったひと』(42分)は長く水俣病運動の先頭に立った市議川本輝夫の発言をまとめている。

○小川紳介  '36年瑞浪市に生まれる。 岩波映画を経て'66年に 監督第1作『青年の海」』を自主製作。 続いて翌年「圧殺の森」を 撮り、自主製作、自主上映の方法を切り開く。 '68年小川プロダクション結成。 長い時間をかけて対象をじっくり見つめ、そこから自分たちのスタイルを発見していく独自の映画作りの方法を展開。映画史上にも類を見ない優れた作品をつくり続ける。 しかし1992年2月、新作の準備にとりかかりながら、惜しくも死去。
⑨圧殺の森一高崎経済大学闘争の記録 高崎経済大学の学園闘争の記録にして、60年代後半の学生叛乱の予兆に満ちた作品。 "盗み撮り"が効果的に使われるが、 小川はその後この手法とは決別。 撮影大津幸四郎。105分。
⑩現認報告書 羽田闘争の記録 「権力との激突の際に、(キャメラは) 決して警察権力と学生の間に横位置に居るべきではなかった」 一小川。佐藤首相訪米阻止闘争での事件を追う。58分。
⑪青年の海一四人の通信教育生たち 通信教育制度改定反対闘争の中で、学ぶこと、働くことを改めて問い直す4人の通教生たち。その運動の行方と逡巡する心の軌跡をキャメラは追う。56分。
⑫日本解放戦線 三里塚の夏 新東京国際空港建設のために土地を強制収用する政府に対し、抵抗する農民を描いた三里塚シリーズ第1作。対象をすべて正面から撮るキャメラが凄い。108分。
⑬日本解放戦線 三里塚 反対闘争の中にも離脱者が出てくる。空港反対派農民に徐々におとずれる疑問・空虚感。 戦いは自己の内面へと向けられていく。撮影田村正毅。 尚、この映画は小川紳介がいちばん愛着を持っていた作品でもある。 141分。
⑭三里塚・第二砦の人々 破壊されるバリケード。農婦らは自らを鎖で縛りつけて後退を拒む。マンハイム映画祭スタンバーグ賞を受賞した作品。143分。
⑮三里塚・辺田部落 "闘い"から"闘いの中の日常"へ小川の目は向けられていく。 キャメラは農民の声を聞き撮りし、村の伝承などを記録する。「古屋敷」へ移行する分水嶺的作品。 146分。
⑯ニッポン国古屋敷村 稲の凶作の原因を探るドキドキするような科学映画の前半から、村の古老たちが自分史をつい最近のことのように語る後半へ。ベルリン映画祭国際批評家賞受賞。210分。
⑰1000年刻みの日時計 牧野村物語 稲の中に宇宙が広がり、様々な出土品は村の古層を現前させ、ドキュメンタリーとフィクションは一体となり溶け合うのだ。小川の集大成的作品。222分。
⑱千年シアター  87年夏、土、藁、葦、丸太で出来た「1000年刻みの日時計」 専用の映画館が京都に出現。この劇場を建設した若者たちを小川紳介が関西のスタッフとともに描く。 18分。

※1 講演:【小川紳介がめざしたもの】
     加藤孝信さん(カメラマン)

※2 特別上映『肘折物語』 小川紳介監督、加藤孝信撮影による映像を、土本典昭監督他により編集された18分のフィルム。(入場料は講演に含みます)

加藤孝信 1989年より小川プロダクションに参加。1992年の小川プロの解散に伴い、以降フリーカメラマンとして活動。撮影担当作品:『映画は生きものの記録である 土本典昭の仕事』(2006年 藤原敏史監督)、『石川文洋を旅する』(2014年 / 大宮浩一監督)、『三里塚のイカロス』(2017年 / 代島治彦監督)、『スープとイデオロギー』(2022年 / ヤン ヨンヒ監督)、『うつろいの時をまとう』(2022年 / 三宅流監督)など。




2023
7/15(土)
 〜 7/21(金)

7/15
(土)
10:30
  13:20
  16:20
  18:40
7/16
(日)
10:30
  13:15
  16:00
  18:00
7/17
(月)
10:30
  12:05
  14:00
  15:45
  17:40
  18:50
7/18
(火)
10:30
  12:05
  14:00
  15:45
  17:45
7/19
(水)
10:30
  13:15
  15:30
  18:05
7/20
(木)
10:30
  13:30
  15:30 ※1
  16:35 ※2
  17:00 ⑰&⑱
7/21
(金)
10:30
  12:30
  15:10
  18:55

 

当日券のみ
(1プログラム)
一 般 1200円
大学生 1000円
シニア 1000円
会 員 1000円
障がい者 1000円
18歳以下 500円
※講演 投げ銭制